スギ舌下免疫療法について
今年は西日本でスギ花粉の飛散が多く、秋田県内は少ないだろうと予報されていました。
しかし、この予想ははずれスギ花粉飛散数は昨年を超え予想を遙かに超えております。
実際に当院の外来を受診された患者数は増えており、数年来ぶりに受診したという方がかなりの数に上っておりました。
以前もこのお茶の間クリニックで御紹介しましたが、治療は診断から始まり、抗ヒスタミン薬を中心とし、ステロイド点鼻薬を用いて加療します。
多くの方は飛散し始めてからくしゃみや鼻水、目のかゆみが大変になってから受診されています。症状が出てから受診し、お薬をもらえば後は何とかなるという方は、このままで全く問題ございませんので以下の文章には目を通さなくても結構です。
問題となるのは、薬を処方されても症状が改善しない、あるいは軽くはなるがとても我慢できるモンじゃないという方です。
まずは初期療法と呼ばれている治療法をご紹介します。
症状が出る前、ここ北鹿地方の花粉飛散は3月下旬から増え始めます。
そこで3月上旬に一度耳鼻科を受診していただくことをお勧めしています。
この時そのシーズンのある程度の情報をお伝えします。例えば今年は大飛散で大変ですとか、大して飛ばないけど外出時はご注意くださいとか、そして、いつ頃から飲み始めるとよいですよ、とアドバイスをします。
この症状の出ていない時期から内服(あるいは点鼻)を開始するのが初期療法です。
症状が出てから飲み始めるより長い期間内服をしなければなりませんが、こうすることで鼻粘膜の過敏性が抑制され、簡単に言うと花粉に対して反応しにくい鼻粘膜となります。
花粉飛散数が増えてくると症状は出ますが、これでだいぶん楽になる方がいます。あとは天気が悪くて花粉が飛びにくい日でも、症状がなくても4月末まで毎日お薬を飲み続けていただきます。調子がよいと内服を止めたり,点鼻薬を中止したりする方もいらっしゃいますが、途中で止めないことが肝心です。
しかしながら、この方法でも飛散量が多い日はつらくてダメな方がいます。実はどうしてもコントロールできない時のとっておきのお薬があります。この薬は一発で効く注射、他の薬ではダメだけどこれ飲んでいれば大丈夫といって渡される薬と同じものです。
ステロイドホルモンというお薬なのですが、確かに効きます。何でこんなにもったいぶった処方するかというと副作用が問題となることがあるからです。
実際そういった副作用も報告されており、現在のアレルギー治療の指針では第一選択の治療薬ではありませんし、注射に関しては治療指針にも「望ましくない」と記載されています。
これでも我慢できないほどの症状が出る方は、レーザーで鼻粘膜を焼灼し粘膜自体の反応性を押さえたり、粘膜が腫れるのを押さえたりする治療をすることがあります。
関東では毎年のようにレーザー療法をされる方がいるようです。
さて、もう既にTVなどでも何度か紹介されていますが、「舌下免疫療法」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。2014年に発売された「シダトレン」と言うお薬を用いて治療する方法です。この「シダトレン」はスギ花粉から抽出されたエキスから作られたお薬です。まぁ言ってみれば「毒をもって毒を制する」というところでしょうか。
対象となる方はおおまかに
- 通常の薬物療法では症状を制御できない患者さん
- 根治を考えている患者さん
- 12才以上で重大な病気にかかっていない方
となります。
一方で、効果に関しては残念ながら100%の患者さんが治癒するわけではありません。やはり効果の少ないケースもあるようです。70%程度と言われていますが、まだ今年で3シーズン目ですので治療効果についてはこれからも色々と情報がアップデートされると思います。
この治療で薬が全くいらなくなるわけではなく、スギ飛散期には内服加療が必要なこともあること(全く薬を必要としない方もいるようです)、スギ花粉への暴露は避けること(マスクをしたり、メガネをかけたり)また、少なくとも2年半(できれば3から5年)は毎日継続する必要があります。毎日お薬を舌の裏(舌下)に垂らして2分保持、その後5分は飲食、うがいを避けること。
2時間は激しい運動や入浴は控えること。お薬は1ヶ月に1度受診し処方してもらう必要があります。やめてすぐに効果がなくなるわけではありませんが、徐々に効果が減少するケースもあります。
以前から行われていた皮下注射をする皮下免疫療法に比べると
- 注射じゃないので痛くない。
- ショック(アナフィラキシーショック)をおこしにくい(おこさないわけではありません)。
- 治療効果は皮下免疫療法(注射)よりは劣る。
これまでの内服治療はお薬で症状を抑えるだけですので、いくら飲んでも治ることはありません。
どうせお金を使うなら、治す治療に費やす方がよいと思いますが、この舌下免疫療法に用いられている薬剤は現在スギの花粉のエキス・ダニのエキスの2種類しかなく、また両者を同時に使用することはできません。
つまり、スギならスギの花粉症、ダニならダニのアレルギー性鼻炎にしか使用できないことになります。花粉症を併発している場合(スギの花粉症とイネ科の雑草や秋の雑草など)は、スギの時期だけ楽になるということです。もちろんスギ花粉症の目のかゆみにも効果はあります。対象は12歳以上の方になります。
妊婦さんはできませんが、数年後には妊娠の可能性のある若い女性、いつもスギの時期に大変な思いをしている野球部やサッカー部,陸上部などの子供達がこの治療法に向いていると思います。スギの免疫療法は花粉飛散期にはできませんので、6月頃にでも受診していただければ詳しい説明を致します。
もちろん、スギ以外のダニの免疫療法についても説明、検査可能な状態です。
興味がある方は一度ご相談ください。